美容師は固定給や歩合制、フリーランスなど、給与体系や働き方が複雑です。
業務委託はサロンと美容師個人が契約を結んだ上で業務に当たりますが、美容師個人が行わなければならない手続きなど、雇用されている時にはなかった作業も発生します。
この記事では、美容師がサロンと業務委託契約を結ぶメリットとデメリット、必要な手続きについて解説します。
美容師における雇用と業務委託の違いとは？
雇用契約と業務委託契約の大きな違いは、後者は労働基準法が適用されないことです。
雇用契約を結べば労働者として労働基準法で守られます。
雇用主は労働者のために雇用保険に加入しなければならず、労働時間の制限や残業代の支払い義務も発生します。
労働者が不当に扱われたり、解雇されたりしないよう法律によって守られているのが雇用契約です。
一方、業務委託では美容師が個人事業主として契約を結ぶため、労働基準法は適用されません。
その代わり、自由度の高い契約が結べます。
業務委託の美容師として活動するメリット・デメリット
雇用契約のように労働基準法で守られないデメリットはありますが、業務委託契約には美容師にとって魅力的なメリットもあります。
業務委託契約のメリットとデメリットについての解説は、以下のとおりです。
業務委託契約のメリット
業務委託契約のメリットは、成果に見合った報酬が得られることです。
交渉次第ではありますが、高い歩合率を設定できれば固定給や固定給+歩合より高収入が見込めます。
また、業務委託契約ではサロン側に指揮命令権がなく、後輩の指導や営業時間外の練習に付き合う必要はありません。
自身のスキルアップや自由な時間を確保しやすくなるメリットもあります。
スタッフの技術テストや棚卸し、ミーティングなど、場合によっては深夜に及ぶこともある業務に携わる必要がなくなります。
業務委託契約のデメリット
業務委託契約のデメリットは労働基準法に適用されないことに加え、収入が不安定になることです。
最低保証給のない完全歩合制になるため、売上の変動がそのまま報酬に反映されます。
雇用保険も適用されずケガや病気で休職する場合にも補償がないので、「安定」とはかけ離れてしまうことがデメリットです。
業務委託の美容師として活動するために必要なこと
サロンと業務委託契約を結び、個人事業主として活動する際には4つの手続きと契約書の作成が必要です。
それぞれについて、以下に解説します。
4つの手続き
個人事業主として活動するため、以下の4つの手続きが必要になります。
・国民健康保険
・国民年金
・開業届
・確定申告方法
勤めていたサロンが社会保険完備で厚生年金と社会保険に加入しているのであれば、国民健康保険と国民年金に切り替えなければいけません。
どちらの手続きも居住地の役所で行えます。
国民健康保険の手続きには、退職したサロンが発行する「健康保険資格喪失証明書」と免許証などの本人確認ができる書類、保険料振替用の口座が必要です。
国民年金の手続きは退職後14日以内に行い、退職日がわかる証明書と年金手帳、本人確認ができる書類が必要です。
開業届(個人事業の開業・廃業等届書)は、業務委託契約を結び個人事業主となった1ヶ月以内に居住地の税務署に提出します。
雇用契約時は保険や税金の手続きを雇用主が行いますが、個人事業主になると自身で手続きをして、支払わなければいけません。
所得にかかる税金を計算し支払う確定申告が必要になるため、青色か白色のどちらで申告するかを決めましょう。
簡単に説明すると、「白色申告」は書類の作成が簡単な分、控除額が低く、「青色申告」は手間のかかる申告書を作成すれば最大65万円の控除が受けられます。
契約書の作成
不要なトラブルを回避するために、業務委託契約を結ぶサロンと契約書を作成します。
歩合率や入客の条件、契約期間、禁止事項など、細かく定める必要がありますが、一方的に不利益を被らないように注意しましょう。
発注者側であるサロンの立場が強く、下請けに当たる美容師側の立場が弱くなりがちですが、契約の公平性を保つために「独占禁止法」と「下請法」の2つの法律があります。
業務委託契約を結ぶ際には不利益を被らないよう、事前に2つの法律の理解を深めておきましょう。
働き方を組み合わせるという選択肢
スキルアップや収入アップ、独立に向けた準備として業務委託契約は有用です。
リスクやデメリットもありますが、それらを抑えるために働き方を組み合わせるという選択肢もあります。
業務委託契約は自由度の高い働き方ができるため副業に取り組みやすく、「スポットワーク」との組み合わせも容易です。
スポットワークは、サロンが指定する日時に単発でサロンワークに加わる働き方であり、入客数が減った場合や閑散期に容易に取り組めるメリットがあります。
また、他店舗のサロンワークに触れられるため、新しいスキルや知識を吸収する機会にもなります。
自由度の高い働き方ができることを活かし、働き方を組み合わせてリスクヘッジを図れます。
業務委託契約はスキルや収入アップに有用
美容師が業務委託契約を結ぶメリットは、スキルや収入アップを図れることです。
成果に見合った報酬を得られるため、モチベーションの向上・維持にも有用でしょう。
ただし、労働基準法の適用外だったり、補償を受けられなかったりするので、リスクヘッジを図ることが大切です。
ライター：ティム（美容師歴20年、現在はフリーランス）
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