「ひどく髪が傷んだ」 「希望した髪型にならなかった」
美容室ではこのようなクレームを受けることがあり得ます。
場合によっては損害賠償訴訟にまで発展し、美容室経営において大きな痛手を負うおそれもあります。
損害賠償訴訟にまで発展しないようにするには、事態の悪化を防ぐための対策や、もしもに備えた保険の加入が重要です。
本記事では、クレーム以上に事態を悪化させないためのポイントや注意点、損害賠償保険について解説します。
クレーム・返金・損害賠償訴訟の順で事態は悪化する
美容室でクレームが発生すると、返金請求、損害賠償訴訟の順で事態は悪化します。
それぞれの流れについての詳細は、以下のとおりです。
クレームは親切心からの場合もある
仕上がりや接客態度に関するクレームには、お客様の親切心によるものもあります。
なぜなら、大半のお客様は仕上がりに不満があるとクレームもなく美容室を利用しなくなるため、お直しのチャンスはありがたいことであり、技術や接客を見直すきっかけにもなるからです。
お直しは技術に対する信頼がまだ残っていなければ応じてもらえないので、感謝と前向きに捉える姿勢が求められます。
ただし、はなから返金や慰謝料を狙った悪質なクレームには、業務妨害として通報が推奨されます。
クレーム対応の序盤は、美容室側は落ち着いて聞き手に徹することが重要です。
クレームを出す側は興奮状態の場合が多く、この状態の相手に反論するとヒートアップする可能性が高くなります。
そのため、まずは言いたいことを吐き出させ、落ち着くのを待ちましょう。
言い終わったら要点をまとめて相手に確認し、謝罪とお直しを提案します。
お直しに応じてもらえない場合は返金対応になります。
はなから返金や慰謝料を狙ったクレーマーは、興奮と怒りの勢いで強引にことを進めようとする傾向にあるので、いつまで経っても落ち着かなければ悪質なクレーマーを疑い、警察や弁護士などの第三者の仲介を提案しましょう。
悪質なクレーマーは勢い任せでは動じない第三者の仲介を避けようとしますが、要求には応じず毅然とした態度で臨むことが大切です。
美容室の技術や対応に失望すると返金請求に
仕上がりに対する不満が強いと、お客様は「これ以上失敗されたくない」と考えるためお直しに応じてもらえません。
担当者より立場やスキルが上のスタイリストがいるなら、担当者を変更したお直しを提案するのも選択肢の一つです。
それでもお直しに応じてもらえず、技術的な落ち度が確認できた場合は、返金対応しかありません。
精神的・肉体的に被害を与えると損害賠償訴訟にまで発展
美容室側の落ち度があまりにも大きく、お客様に精神的・肉体的な被害を与えると損害賠償訴訟にまで発展するおそれもあります。
大半は示談に応じてもらえますが、被害が大きく、示談金額がお客様の希望に沿っていない場合は裁判になります。
裁判にまで発展すると弁護士への依頼が推奨されますが、損害賠償保険に加入しているなら弁護士特約が付与されているケースが多いため、確認しておきましょう。
裁判にまで発展しないように示談交渉も任せられるので、加入する際は弁護士特約が付与された保険を選びましょう。
美容室に適した損害賠償保険は3種類
美容室が損害賠償保険に加入するなら、「施設賠償責任保険」「生産物賠償責任保険」「受託者賠償責任保険」の3種類は必須です。
火災や災害などの複数の補償内容がセットになった保険もあれば、被保険者が保険内容を選ぶ商品もあるので、加入の際には注意しましょう。
それぞれの保険の概要は、以下のとおりです。
施設賠償責任保険
美容室内で起こったアクシデントに対応しているのがこの保険です。
カット中にシザーでお客様を怪我させてしまったり、薬剤で皮膚が荒れたりした場合など、美容室内で起こった損害賠償に該当する事案を補償します。
生産物賠償責任保険
製造元に責任があると思われるかもしれませんが、美容室も責任を負わなければならないのが店販のシャンプーやトリートメントによって皮膚トラブルが起こった場合です。
市販に比べて刺激が少ない仕様になっているサロン用のシャンプーですが、肌トラブルを引き起こす可能性はゼロではありません。
このようなケースに対応しているのが、生産物賠償責任保険です。
受託者賠償責任保険
受付の際にお客様のピアスやネックレスなどのアクセサリーをお預かりする場合があります。
薬剤で腐食や変色させないためですが、預かったまま紛失するケースもあります。
高額なアクセサリーであれば弁償の負担も大きくなりますが、これに対応しているのが受託者賠償責任保険です。
経営者もスタッフも安心して業務に当たるために保険加入が推奨
クレームにはできればお直しで対応し、それでも事態が収まらない場合に返金や示談になります。
損害賠償訴訟にまで発展するおそれはどの美容室にもあり、もしもの際に備えて保険の加入が推奨されるでしょう。
長引く美容業界の人手不足から、労働環境の改善と整備が求められています。
待遇面の向上、時短勤務やスポットバイトなどの多様性のある働き方の導入など、多くの美容室が労働環境の整備に取り組んでいます。
損害賠償保険の加入やトラブル対策の構築による「安心して働ける職場づくり」も労働環境の整備の一環といえるでしょう 経営者はもちろん、スタッフも安心して業務に当たれるように環境を整えるため、損害賠償保険の加入とクレーム対策の構築を検討してみてはいかがでしょうか。
ライター:ティム(美容師歴20年、現在はフリーランス)
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