さまざまな業界で「働き方改革」が取り上げられていますが、深刻な人手不足が続く美容業界でも人材確保のために働き方が変わりつつあります。
理由があって美容から離れたとしても、改善された労働環境であれば復職も可能なケースがあります。
この記事では、40代の元スタイリストに需要がある理由や、サロンに復帰する際の選び方のポイントについて解説します。
80%のサロンは人材不足
サロンの80%以上は人材不足に陥っているとされていることに加え、新卒では人材不足は解消しないため、40代の元美容師に需要があります。
厚生労働省の「美容業の実態と経営改善の方策」によると、平成27年度末時点のサロンに勤める美容師の人数は50万4,698人です。
サロンは24万0,299施設となっているので、1サロン当たりの美容師数は約2人です。
一人で営業しているサロンもあれば、数十人で営業しているサロンもありますが、1サロンに平均2人の美容師では十分な人材を確保できているとは考え難く、80%以上のサロンが人材不足に陥っているとされています。
また、サロンは令和3年度には26万4,223施設に達しています。
一方、毎年春と秋の2回実施される国家試験に合格し美容師となる人数は約2万3,000人です。
新たに美容師になる人数はピークより落ち着いた数値で停滞しており、離職率の高い美容業では人材不足は慢性化しています。
全業種の有効求人倍率は1.27倍ですが、美容師を含む「生活衛生サービスの業種」の有効求人倍率は3.33倍です。
生活衛生サービスの業種に就きたい人が3倍以上に増えなければ、人手不足は解決しない状況が続いており、美容業界の人材不足の深刻さを示しています。
元美容師は「休眠美容師」とも呼ばれ、人材不足が続く美容業界を救うキーパーソンとして注目されています。
参照:厚生労働省 「一般職業紹介状況」(令和4年11月分) https://www.mhlw.go.jp/content/11602000/001026658.pdf
厚生労働省 「美容業の実態と経営改善の方策」 https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000453597.pdf
厚生労働省 「令和3年度衛生行政報告例の概要」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/21/dl/gaikyo.pdf
公益財団法人 理容師美容師試験研修センター https://www.rbc.or.jp/exam/past_result/
元スタイリストか元アシスタントでサロンの選び方が変わる
美容業界を離れる前に、スタイリストだったかアシスタントだったかで、復職時のサロンの選び方が変わります。
スタイリストを務めたということは技術を全般的に修めているので、勘を取り戻し、実践段階まで技術レベルを引き上げるまでの期間が短くて済みます。
一方、アシスタントのままサロンから離れた場合は、復職するサロンで一から技術を修得し直さなければいけません。
スタイリストとアシスタントで、復職前後の練習やサロンワークへの取り組み方が変わるためサロン選びにも影響します。
スタイリストだったら稼げるかプライベートと両立できるか
短期間で実践レベルまでスキルを引き上げられる元スタイリストは、復職後の目標でサロンを選びましょう。
目標の例として、稼ぎたいのか、プライベートや子育てとの両立を目指すのかが挙げられます。
目標達成のため、サロンを選ぶ際に注意するポイントは以下のとおりです。
稼ぐことが目標なら新規客の人数が重要
スタイリストとして稼ぐなら、顧客を増やし、売り上げを伸ばすしか方法はありません。
そのため、新規客が多いサロンの方が担当できる客数も多くなるので売り上げも伸ばせます。
新規客の多寡は、サロンの経営年数や広告から予想がつきます。
開業から年数が浅く、広告を出しており、繁盛しているサロンは新規客が多い可能性が高いです。
逆に、開業から年数が経っていて、広告を出していなくても繁盛しているサロンは顧客とその紹介が多いことが予想され、新人スタイリストに担当に入る機会は回ってきません。
プライベート重視なら勤務時間や休日の取り方を重視
たとえば、子育て中であるなら、仕事とプライベートのバランスが重要になります。
保育園や学校の行事に参加できるように休日の取得が容易なサロンの方が働きやすくなるでしょう。
時短勤務に対応しているサロンなら、子どもの送り迎えも難しくありません。
カット専門やカラー専門のサロンは指名制度を導入していないケースも多く、急なお迎えの要請にも対応できるメリットがあります。
勤務時間や休日の取得方法などは多様化しており、プライベートとの両立の見通しが立つ働き方ができるサロンを選びましょう。
派遣やスポットワークも選択肢に入る
派遣会社に所属して美容師に復帰するケースや、新しい働き方である「スポットワーク」について、以下に解説します。
美容師の派遣
サロンに勤めることが一般的でしたが、派遣会社に所属してサロンに派遣される美容師も増えています。
メリットは、サービス残業や営業時間外の練習がないことです。
勤務時間や出勤日数は、派遣会社とサロンの間で取り決められます。
サロンワークが忙しい場合は、営業時間外まで仕事が続くことも珍しくありませんが、契約で決まっているため時間外の勤務にも給与が発生します。
また、営業の前後の時間を練習にあてるサロンが多く、スタイリストはアシスタントの指導や自身のスキル向上に努めなければいけません。
練習は勤務時間外なので給与は発生せず、サービス残業になります。
サロン全体で取り組むため個人で拒否しづらい練習ですが、所属する派遣会社との契約上の理由であれば断りやすくなります。
美容師のスポットワーク
「スポットワーク」や「スポットバイト」は普及が進む新しい働き方です。
サロンは人手が欲しい日時を指定して募集し、その日時にサロンワークに参加できる美容師が応募する、単発の派遣のような働き方です。
たとえば、今の仕事を続けたまま副業としてスポットワークを取り入れたり、サロン復帰の前に勘を取り戻すために活用したりするなど、さまざまな用途で利用されています。
目標達成につながるサロンを選ぶ
売り上げを伸ばして稼ぎたいのか、プライベートの時間を確保しやすい働き方を求めるのかで、サロンを選ぶ基準が変わります。
また、美容師の派遣やスポットワークなどの新しい働き方も、目標によっては達成のために有用です。
人手不足が慢性化している美容業界は40代にも需要があります。
努力して取得した美容師免許とスタイリストまで務めた経験を活かす際には、紹介したサロン選びのポイントを参考にしてみてはいかがでしょうか。
ライター:ティム(美容師歴20年、現在はフリーランス)
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