客単価は美容室の売上を構成する重要な要素です。
美容室の施設数増加と人口減少を背景に、客単価は高くなる傾向にあります。
これは多くの美容室が経営戦略の一環として客単価アップに取り組んでいる結果であり、美容業界の平均客単価より低い場合には早急に対策を講じる必要があるでしょう。
本記事では美容室のオーナーに向け、客単価の計算方法や上げ方について解説します。
美容室の利益は「客単価」×「来店サイクル」
ホットペッパービューティーが公開するデータによると、2022年の平均客単価は7,345円、平均年間利用回数は4.15回です。
顧客1人当たりの平均年間消費額は、「(平均客単価7,345円)×(平均年間利用回数4.15回)=30,481.75円」になります。
サロンの平均客単価を算出して上記のデータより低い場合は、改善に取り組まなければ経営悪化に陥るおそれがあります。
なぜなら、人口減少に伴いサロンを利用する可能性のある消費者が減っており、サロンの施設数増加も加わって客単価アップや来店サイクルの短縮は、美容室経営において重要性が増しているからです。
人手不足の解消も美容室が取り組まなければならない課題となっているため、オーナーの手腕が経営を左右するカギとなっています。
参考元:「ホットペッパービューティー データブック」
美容室の客単価の計算方法
美容室の客単価は、「総売上」と「技術売上」の2つを基に算出する方法があります。
それぞれの計算方法は、以下のとおりです。
総合売上から算出する方法
店販も含めた総売上を来店人数で割る方法です。
初来店より回数を重ねて信頼関係を築いてから店販が売れる傾向にあり、固定客が多く、店販にも力を入れているサロンに適した計算方法といえます。
技術売上から算出する方法
新規客が多いサロンであれば、技術売上を基に客単価を算出する方が適しています。
また、データを経営に活用するためには、来店回数ごとの客単価やリピート率も算出することが重要です。
集客のために割引制度を導入するケースがありますが多くの場合、割引を利用できるのは初回だけです。
来店1回目に比べて2~3回目の客単価が低くなっているようなら、提供したスタイルの満足度が割引の魅力を超えられなかった可能性があります。
リピート率が低い場合はより深刻です。
早急にサロンコンセプトの再検討やスキルアップに取り組み、リピート率の向上を図る必要があります。
客単価を上げる方法4選
客単価を上げる方法は、次の4つが挙げられます。
- 高単価メニューの開発
- 3つの料金設定
- カウンセリング力と提案力の強化
- 次回の提案のための情報収集
それぞれの詳細は、以下のとおりです。
高単価メニューの開発
1つ目の客単価を上げる方法は、高単価メニューの開発です。
具体的には、ウェーブやストレートパーマに、カラーのリタッチをセットにしたメニューが挙げられます。
全体カラーではダメージが上がり、先に施術したメニューのクオリティが下がるため適しません。
しかし、リタッチのみのカラーであれば既染部とダメージレベルを合わせられるので、色落ちのリスクを抑えつつパーマ液の選定が容易になります。
デジタルパーマを導入しているなら、リタッチ部分のストレートに毛先のカールをセットにしたメニューも有用です。
カラーの彩度と色持ち向上に効果的な重ね塗りやトナー、デザインの幅を広げるレイヤードカラーなども客単価を上げるためのメニューとして挙げられるでしょう。
どちらも技術力やケミカル知識が未熟な場合にはかえってサロンの信用を失いかねないのでお勧めできませんが、適切に施術できるなら客単価を上げる高単価メニューとして活用できます。
3つの料金設定
心理学のフレーミング効果、またはゴルディロックス効果を用いて、メニューの料金設定を3種類用意するのも、客単価を上げるのに有効です。
「極端の回避性」を利用した心理テクニックで、3つの料金が提示されると1番高い料金と1番低い料金より、中間の料金が選ばれやすい現象を指します。
料金を1つ、または2つを提示されると「選ぶか選ばない」かの2択になりがちですが、料金が3つあることで「中間の料金が選ばれる」可能性が高くなります。
たとえば、トリートメントメニューに3つの料金を設けることで、中間の価格のトリートメントメニューが選ばれる可能性が高くなり、客単価アップにつながるでしょう。
カウンセリング力と提案力の強化
客単価を上げるためには、プラスメニューが欠かせません。
ただし、顧客が納得しないままメニューを増やすのは押し売りであり、失客につながります。
そのため、顧客がプラスメニューに納得感を得られるように、カウンセリングを強化する必要があります。
プロの知識を一般人にも理解できるように説明してお勧めする提案力を伸ばすことが重要です。
次回の提案につながる情報収集
接客中は提案につながる情報を収集するようにしましょう。
長期休暇でリゾート地に行き泳ぐ予定があるなら、髪のダメージが進むことが予想されるので、その前後にトリートメントを勧めるチャンスです。
朝のスタイリング時間の確保が難しいようであれば、スタイリング時間短縮につながるメニューを提案する機会になるでしょう。
カウンセリングより接客中の時間の方が長いので、その分、次回の提案に役立つ情報を得やすくなります。
サロン全体のスキルアップと人材確保は必須
客単価アップのためのプラスメニューが髪のダメージを進行させたり、施術時間が大幅に延びてサロンワークが滞ったりするようでは美容室の経営改善につながりません。
サロン全体のスキルアップが重要になり、深刻化する美容業界の人手不足にも対策を練る必要があります。
人手不足解消に期待される「休眠美容師」と「スポットワーク」の詳細は、以下のとおりです。
人手不足の解決策として注目される「休眠美容師」
全体より高い水準の有効求人倍率が続く美容業界ですが、改善の見通しは立っていません。
そこで注目されているのが、一度サロンに勤めたものの美容業界から離れてしまった「休眠美容師」です。
休眠美容師をサロンに呼び戻す対策として、労働環境の改善が挙げられます。
人材確保に有用な「スポットワーク」
新しい働き方として注目される「スポットワーク」も人材確保に有用です。
単発の派遣のような働き方なので土日祝日や繁忙期に絞って人材を補え、人件費を抑えつつマンパワーを確保できるメリットがあります。
サロン経営の健全化には客単価アップと人材確保の両輪が必要
・高単価メニューの開発
・3つの料金設定
・カウンセリング力と提案力の強化
・次回の提案のための情報収集
上記の4つの方法が客単価アップに有用であり、サロン全体のスキルアップや人材の確保と並行して取り組むことでサロン経営の健全化につながります。
人材確保の手段として新しい働き方である「スポットワーク」が注目されており、美容室と美容師のスポットワークに特化したサービス「びすけっとリンク」が選択肢として挙げられるでしょう。