美容室を運営するうえで、顧客の来店サイクルは重要な要素です。
美容室の施設数は増え続けているのに対し、人口が減少している現代では、来店サイクルの重要性は増しています。
この記事では、来店サイクルの計算方法や4つのサイクル短縮方法を紹介します。
美容室の来店サイクルは年代や性別ごとに算出する
来店サイクルと客単価で、美容室の利益は決まります。
来店サイクルが短く、客単価が高いほど美容室は多くの利益を得ますが、年代や性別ごとに計算しなければデータを経営に有効活用できません。
たとえば、メンズカットや根元のグレイカラーのみで来店する顧客が多ければ、平均来店サイクルは短くなります。
美容室全体の平均来店サイクルは短くなるものの、これらのメニューは客単価も低くなるため、全体の平均値だけを見ると客単価を上げる施策が必要と判断されます。
しかし、実際にはメンズカットや根元のグレイカラーで来店する顧客は客単価を上げにくい傾向にあり、カラーやパーマの要望がある女性客の来店サイクル短縮に取り組む方が全体の売上アップには効果的です。
全体の来店サイクルでは美容室の経営改善点が分析しにくくなるので、年代や性別ごとに算出しましょう。
美容室の来店サイクルの計算方法
美容室の来店サイクルは年単位で計算されます。
年3回来店する顧客なら「365÷3」となり来店サイクルは約121.7日、年5回来店なら「365÷5」で73日です。
美容室の来店サイクルの短縮方法4選
美容室の来店サイクルを短縮する方法は、以下の4つが挙げられます。
- スタイルの説明
- 次回の提案
- 次回の予約を促す
- サービスの導入
それぞれについて解説します。
スタイルの「賞味期限」を説明
1つめの来店サイクルの短縮方法は、スタイルの「賞味期限」の説明です。
どのくらいの期間でスタイルが維持できなくなるかを伝えて、次に来店するタイミングを提案します。
しかし「2カ月後にスタイリングが難しくなります」のように、時期だけを伝えるのでは来店を促せません。
「髪のクセや毛流れを計算して毛先が収まるようにカットしていますが、髪は1カ月に約1cm伸びるので2cm伸びた2カ月後に収まりが悪くなります。毛先がはねやすくなり、スタイリングしづらいと感じたらご来店ください。」
具体的には上記のように、「なぜスタイルを維持できなくなるのか」を技術的な視点から説明することで顧客の髪に対する高い理解度を示せます。
顧客の髪質に対する理解度を示すことで信頼関係を築けるため、来店の提案にも納得感が生まれます。
次回のスタイル提案
変化を求めたり、気分によってスタイルを変えたりしたい顧客に対しては、次回のスタイル提案が来店サイクルの短縮につながります。
なぜなら、次のスタイルへの期待が、来店動機になるからです。
気に入ったスタイルがあり、変化を求めていない顧客に「あれもこれも」と提案すると逆効果なので見極めが重要です。
同じスタイルが続きマンネリ化が進むと来店サイクルが長くなるどころか失客の可能性もあるため、顧客の嗜好に合わせて次回の期待値を上げる提案をしましょう。
次回の予約を促す施策
スタイルの賞味期限の説明や次回のスタイル提案から予約につなげる施策が、来店サイクルの短縮に有用です。
具体的には、土日祝日に来店する顧客をリストアップし、個別に来店サイクルを算出して1~2週間短い予約をお勧めします。
美容室は土日祝日が混みやすく、希望の日時に予約が取れないケースが少なくありません。
そのため、早めに予約すれば希望が通ることを伝えるだけで、無理強いせず次回の予約を促せます。
割引などのお得なサービスの導入
来店サイクルの短縮につながるサービスとして挙げられるのは、カットだったら1カ月以内、カラーやパーマなら2~2.5カ月以内の来店で割引になる制度です。
「どうせカットに行くなら1カ月以内にしよう」と思ってもらえるようなサービスを導入しましょう。
来店サイクルを短縮する際の注意点
来店サイクルの短縮は美容室の売上アップに直結しますが、「失客」と「客単価の低下」には注意しましょう。
無理に来店を促すと失客につながる
店販に厳しいノルマを課す美容室にありがちなスタッフの押し売り感と同様に、短い来店サイクルの提案が無理強いと受け取られると失客につながりかねません。
失客になっては元も子もないので、あくまでも無理のない範囲で筋の通った施策を講じましょう。
客単価の低下に気を付ける
来店サイクルの短縮につながる割引サービスは有用ですが、客単価を下げ過ぎるようなら注意が必要です。
割引を導入し来店サイクルが短縮されたと想定して、顧客1人当たりの年間支払い額が十分上がるサービス内容を検討しましょう。
人材育成や人手の確保も重要!
来店サイクル短縮や客単価アップのために、人材育成も並行して実施する必要があります。
施術スピードを上げ、クオリティの高いスタイルを提供するには、サロン全体のスキルアップが欠かせないからです。
また、深刻な人材不足が続く美容業界では、「働きたい・働き続けたい」と思われる労働環境を整えることが喫緊の課題となっています。
働きやすい労働環境の整備に加え、最適な求人媒体の選択が人材確保の要です。
働きやすい労働環境
地域の美容室に比べ、給与や休日の日数が少なくないでしょうか?
スキルや知識を身につけられることは重要ですが、客観的に「働きたい」と思われる美容室でなければ、今後さらに人材の確保が難しくなるでしょう。
人手不足解消のカギとして、美容業界から離れた「休眠美容師」が注目されていますが、求人活動に取り組むなら他業種より魅力的な待遇や労働環境が必要です。
最適な求人媒体を選択
求人媒体のメリットとデメリットを把握して人材確保に取り組みましょう。
美容室専門求人サイトは、美容師だけに訴求するため高い応募率がメリットです。
一方、費用が高額であることがデメリットとして挙げられます。
美容師の派遣も普及しています。
条件に合う美容師が派遣されるため、採用活動や育成の負担を抑えられますが、派遣費用が上乗せされるため人件費が高くなることがデメリットです。
単発の派遣のような働き方である「スポットワーク」には美容室と美容師を対象にしたサービスがあり、コストゼロで利用できる求人媒体もあるため新しい人材確保の手段として注目されています。
来店サイクルの短縮方法4選と人材確保に取り組みサロン経営を健全化
・賞味期限の説明
・次回のスタイル提案
・次回の予約
・来店サイクル短縮につながるサービスの導入
上記の4つの施策に取り組むことで、来店サイクルの短縮につながります。
また、全体のスキルアップや人材確保にも並行して取り組むことでサロン経営の健全化が図れるでしょう。