少子化対策や子育て支援の拡充が取り上げられていますが、美容業界では育児に関する制度はどのようになっているのでしょうか?
この記事では、美容師の育児休業取得の可不可、育休明けの働き方について解説します。
美容師も育児休業を取得できる
育児休業の取得は、法律で認められた権利です。
出産に伴う休業の取得は女性に認められている権利ですが、育児に伴う休業の取得は男女ともに認められています。
しかし、男性の低い育児休業取得率を改善するため、また子育て環境を整えるために2022(令和4)年10月1日から「育児・介護休業法」が改正されました。
この改正により、「出生時育児休業(産後パパ育休)」が創設され、育休とは別に子の出生後8週間以内に4週間までの休業を、男性が取得できるようになりました。
また、出生時育児休業と育児休業は法改正により、2回に分割して取得できます。
男女ともに2回に分割して育休を取得できるようになり、交代で育休を取得し、夫婦のどちらかに負担が偏らない子育て環境が実現しやすくなりました。
参照:厚生労働省 育児・介護休業法 改正ポイントのご案内
育休手当があるかないかは給与形態による
美容業界は給与形態が一般企業に比べて特殊なため、育児手当が支給されないケースもあります。
育児手当が支給される条件についての解説は、以下のとおりです。
育休手当は雇用保険から支給
育児手当が支給されるのは、雇用保険からです。
育休が取得できる期間は原則1年間(子どもが1歳になる前々日まで)、保育所などに入所できない場合は延長で1年6ヶ月間、再延長すると2年間です。
この間は育児手当を申請でき、育休取得から180日までは「休業開始時賃金日額」の67%、181日以降は50%の金額が支給されます。
また策定や施行時期は未定ですが、子育て支援の拡充のため育休手当の支給率を67%から80%に引き上げることが政府により検討されています。
雇用保険加入の義務対象にならない美容師
サロンの規模に関わらず、スタッフを雇う場合に雇用主は雇用保険に加入しなければいけません。
ただし、給与形態が完全歩合制の場合は注意が必要です。
完全歩合制は雇用ではなく業務委託契約になるケースもあり、その場合は雇用保険には入れません。
面貸しは業務委託か個人事業主になり、同じく雇用保険に入れないので注意が必要です。
雇用保険に加入していなければ育児手当も支給されないため、育児休業を取得する予定のある美容師は自身の雇用形態や雇用保険に加入しているかを確認しておきましょう。
実情は離職するケースも多い
育休の取得は法律によって守られている権利ですが、離職する美容師が多いのが実情です。
その背景について、以下に解説します。
指名制度の影響
サロンの多くが指名制度を導入しています。 育児休業は期間が1~2年に及ぶため、指名客を他のスタイリストに引き継がなければいけません。
保育所などの関係もあり復帰時期を断言できないこと、また復帰したとしても引き継いだ指名客が戻ってくる保証はないことから離職を選ぶ美容師は少なくありません。
また完全歩合制ではなくても部分歩合制のサロンが多く、復帰後に売上が下がり、それに伴って給与が減ることも離職が増える要因の1つです。
労働環境の影響
サロンは土日祝日が営業であることに加え、指名制度により急に休みづらいです。
子どもが急に体調を崩し看病が必要になることは珍しくなく、タイミングも読めません。
早くから予約を入れてくれた指名客に当日、スタイリスト側からキャンセルを申し出なければならなくなり、指名客や対応するスタッフにも負担がかかります。
このような労働環境では育児との両立が難しいと感じ、出産を機に離職する傾向にあります。
サロンに復帰する方法
国家資格を取り、サロンワークと練習を積み重ねて培った技術力を活用しないのは、美容業界にとって大きな損失です。
深刻な人手不足が続く美容業界では、一度サロンに勤めたものの離職した「休眠美容師」が注目されています。
出産を機に離職した美容師がサロンに復帰する方法として、以下の2つが挙げられます。
育児に理解のあるサロン
人手不足が深刻で、美容学校の新卒者では問題の解決に至らないため、育児との両立が難しいことが原因で離職した美容師を呼び戻そうとするサロンが増えています。
呼び戻す施策として労働環境の改善に取り組んでおり、子育てとサロンワークを両立しやすく、理解もあるサロンが増えました。
子育てママ美容師が復帰するサロンとして適していますし、妊娠・出産前に子育てに理解のあるサロンに移ることでよりスムーズに育休から復帰できます。
美容師スポットバイト
子どもの成長や家庭環境によっては、子育てに理解のあるサロンでも両立が難しい場合があります。
まとまった時間を確保しにくいケースに適しているのが「スポットバイト」です。
単発の派遣のように、サロンが指定する日時のサロンワークに参加する新しい働き方で、他店舗にヘルプに行くようなものだと考えるとイメージしやすいでしょう。
まとまった時間が確保できなくても取り組みやすく、サロンワークから長く離れて勘が鈍るのを抑えられます。
また、実際にサロンワークを体験できるので、将来的に働きたいと思えるサロンに出会える可能性もあります。
人間関係やサロン全体の技術力を事前に把握できるため、勤めてみると期待や話と違ったといった失敗を防げるでしょう。
育休は権利!復帰を視野に入れるならサロンを移ることも検討しよう
育休やそれに伴い支給される手当は、男女ともに認められている権利です。
雇用主は育休取得者に不利になる待遇をしてはいけませんが、美容業界の性質が出産を機に離職する原因の1つになっています。
しかし、人手不足解消のため子育てしやすい労働環境の整備に取り組むサロンも増えており、復帰の際には選択肢に入るでしょう。
また、まとまった時間を確保できず復帰を諦めている子育てママ美容師は、時間が確保できたときだけサロンワークに取り組める「スポットバイト」を検討してみてはいかがでしょうか。
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ライター:ティム(美容師歴20年、現在はフリーランス)
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