経費の中で、高い割合を占める人件費。
人材確保において厳しい状況が続く美容業界では、人件費も高騰傾向にあります。
では、美容室の人件費はどのくらいが適正なのでしょうか? 本記事ではサロンオーナーや経営陣に向け、美容室の人件費の適正な割合や抑えて利益率を上げる方法について解説します。
美容室は人件費が必要経費の多くを占める
美容室には下記のような経費があります。
- 人件費
- 家賃
- 材料費
- 水道光熱費
- 雑誌購入費
- 通信費
- 広告費
この中で最も比率が高いのが人件費であり、約40%とされています。
月売上100万円までであればスタイリスト1人でも対応できますが、月売上150万円を達成するにはアシスタント1人のサポートが必要になるでしょう。
スタイリストの給与を完全歩合換算で25%、アシスタントの給与を20万円とすると、売上に対する人件費の割合は「(スタイリストの給与37.5万円+アシスタントの給与20万円)÷売上150万円=約38%」となります。
月売上200万円ならアシスタントが2人必要になるので、「(スタイリストの給与50万円+アシスタント2人分の給与40万円)÷売上200万円=45%」です。
スタイリストの給与体系やアシスタントの給与にもよりますが上記のような概算になるため、美容室の人件費の割合は40%前後になります。
美容室の経営を維持するための1人あたりの生産性は50万円
美容室の経営を維持するために必要なスタッフ1人あたりの生産性は、50万円といわれています。
経営を成長させるなら、1人あたりの生産性は70~80万円です。
前出の人件費率40%に収めるには、1人あたりの生産性を70万円前後に維持しなければいけません。
つまり、美容室の経費に占める人件費の割合が40%を大きく超えるようなら、改善策を講じる必要があるということになります。
人件費を改善するための3つのポイント
美容室の経費に占める人件費の割合が40%を超える場合には改善策を講じる必要があり、下記の3つの施策が有用です。
- 生産性を高める
- スタッフ構成の最適化
- 限定的な人材確保
それぞれの改善策について、以下に解説します。
1人あたりの生産性を高める
まず取り組まなければいけないのは、1人あたりの生産性を高めることです。
- 客数を増やす
- 客単価アップ
- 来店サイクル短縮
- アシスタントが担当できるメニュー開発
上記の4つが生産性を高める施策として挙げられますが、見落としがちなのが「アシスタントが担当できるメニュー開発」です。
その他の3つに関して取り組んでいる美容室は多いですが、スタイリストのサポート業務がメインになるアシスタントの生産性については考えていないケースも散見されます。
アシスタントが売上を上げるには、通常のレッスンでは修得できない技術が必要です。
ヘッドスパや毛質改善ケアをアシスタントが指名を取れるレベルまで高めたり、マツエクやネイルなどの通常のサロンワークでは修得できない技術にも取り組んだりしなければならないため、美容室とアシスタント、双方にとって負担がかかります。
新規客の獲得や来店サイクルの短縮、客単価のアップなどを図って早期に効果が見込まれるなら問題ありませんが、すぐには効果が期待できない場合は美容室の客層に合ったアシスタントが担当できるメニューの開発が推奨されるでしょう。
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スタッフの構成自体に問題がある場合は要注意
上記の生産性を高める改善策を講じても人件費の割合が40%を大幅に超える場合は、スタッフの構成自体に問題を抱えている可能性があります。
スタイリストの人数に対してアシスタントの人数が多過ぎたり、サロンのキャパ以上にスタッフを抱えていたりするなど、前出の対策では改善できない問題を解決しなければいけません。
スタイリストに昇格間近なアシスタントの指導への注力や、店舗の拡大などで改善を図ることが先決ですが、それでも効果が見込まれなければスタッフ構成の改善が必要です。
土日祝日・繁忙期に絞って人材確保
人材を確保する際に土日祝日や繁忙期を想定すると、平日や閑散期のサロンワークには過剰なスタッフ構成になりがちです。
平日や閑散期に売上が下がるのと過剰なスタッフ構成により、人件費を圧迫します。
しかし、平日や閑散期を想定したスタッフ構成では、土日祝日や繁忙期のサロンワークが回らない可能性もあるでしょう。
従来では、土日祝日に絞った人材確保はアルバイトやパートが中心でしたが、スポットワークなどの新しい働き方も普及しています。
スポットワークは対象を美容師に限定し、美容室が指定する日時にピンポイントで人材を確保できるサービスも提供されているため、土日祝日や繁忙期に絞って活用すればスタッフ構成の最適化が可能です。
美容師のスポットワーク・スポットバイトとは?
スポットワーク、スポットバイトは日にちと時間が指定された仕事を単発で行う働き方です。
隙間時間を有効活用しながら働け、副業として美容師をすることや、違う環境で働くことを経験しやすいといった特徴があります。
また、様々なサロンでの業務経験ができるため、美容師にとっては多くの先輩美容師や薬剤に触れる機会が格段に増え美容師としてのスキル向上にも一役買います。
「スポットワーク」で最大限にスキルを磨くための3つのポイント
サロン経営者であれば逆に人を雇うこともでき、美容師同士の情報交換も可能です。
人件費が40%を超えている美容室は改善策が必要
美容室の人件費率の相場は40%です。
40%を超えているなら、下記の対策を講じましょう。
- 生産性を高める
- スタッフ構成の最適化
- 限定的な人材確保
人件費は美容室の経費の多くを占める上、対策次第で改善が図れるため、サロンコンセプトや経営状況を鑑みて取り組むことで経営の健全化が見込まれます。
ライター:ティム(美容師歴20年、現在はフリーランス)
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